日本全体が少子化で人口減に悩まされる中、東京都江東区豊洲は、空前の人口増と再開発に沸き立っている。新たに設置された豊洲署生活安全課の女性刑事・岩倉梓のもとに持ち込まれる事件の数々。《児童ネグレクト》《貧困老人の孤独死》《震災詐欺》――。生まれつつある街の中で、梓は自分に出来る仕事を悩みながらも一歩一歩模索していく……。本格派・福田和代が描く、新世代警察小説。(解説・宇田川拓哉)
各作品には、発表時期または設定時期が明記されていて、作中の物語は2010年から2011年の出来事である… 岩倉梓が取り組む事件は…児童ネグレクト、貧しい老人の孤独死、幼稚園での騒動、ストーカー騒動、震災に絡んだ詐欺と様々だ…何れも…或いは「最近の社会の縮図」のようでリアルだ…そういう事態に、主人公が一つずつ真摯に向き合う。或いは、警察で“本流”のようになっている「凶悪重大事件を扱う」ということも大切だが、岩倉刑事が向き合うような、様々な事案の方が世の中には圧倒的に多い筈である。故に、岩倉刑事達の動きや関係者の様子が、読む側に「迫る」感じがする… 本の題名に在る“ゾーン”という表現…これは「〇〇の街」という程に明確な“目鼻立ち”が定まっているでもない地域を指し示している…豊洲は、再開発が為されて人口も増え、岩倉刑事が勤務する豊洲署も開設された。他方、「豊洲の街」という程に“目鼻立ち”が定まっている感でもない…東京の方々に在る「〇〇の街」は、そういう“ゾーン”という時期も経ながら形成されて行った。そういう様子を見守るのが、岩倉刑事達の役目でも在るのだと本書は語っている…
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